精密部品の製造・管理現場において、「部品洗浄」は製品の品質を左右する重要なステップです。特に、油脂やグリースなどの頑固な汚れを落とす場合、高い洗浄力が求められます。そこで注目されているのが臭素系洗浄剤です。
本記事では、臭素系洗浄剤の特徴やメリット・デメリットを、中小規模の現場管理者が気になる視点から解説しています。
臭素系洗浄剤は、主成分として1-ブロモプロパンを含む溶剤に分類されます。油脂やグリースを強力に溶解できる洗浄力を持ち、不燃性であるため火災リスクの低減が期待できる点が大きな特徴です。
複雑な形状や微細なすき間に入り込んだ汚れの除去が重要になる「精密部品」の洗浄において、頼もしい存在だといえるでしょう。
臭素系洗浄剤には人間や動物の生殖機能に悪影響を及ぼす性質(生殖毒性)があるため、労働安全衛生法やPRTR法などの法規制によって管理義務が強化されつつあります。
2024年4月1日には厚生労働省によって、臭素系洗浄剤の主要成分である「1-ブロモプロパン」の空気中許容濃度が0.1ppm以下(8時間加重平均値)に制定されました(※)。
今後も1-ブロモプロパンの許容濃度は厳格化される見込みです。これらの法規制強化を背景に、代替洗浄剤への移行を検討する企業が増加しています。
臭素系洗浄剤には、頑固な油汚れを素早く落とせる高い洗浄力があるため、複雑な形状の部品や微細な隙間に入り込んだ汚れも効果的に除去できます。これは、分子構造が油脂と類似しており、相互に溶けやすい性質を持つためです。
主に金属加工品の製造工程やメンテナンス現場で重宝されています。
臭素系洗浄剤は引火点を持たない不燃性です。そのため、通常なら火災・防爆対策にかかる設備のコストを削減できます。
爆発や火災のリスクが低減されるため、静電気や火花が発生しやすい電装系部品の洗浄に向いているメリットも。乾燥機や熱風炉、加熱炉などの高温設備が近くにあり、溶剤の蒸気が発火点に達しやすい洗浄ラインにも向いています。
蒸留再生とは、使用済みの洗浄剤を加熱して蒸発させ、再度冷却して液体に戻すことで、不純物を取り除き、洗浄剤を再利用する方法です。臭素系洗浄剤は蒸留再生が可能なため、洗浄剤の使用量を削減できるほか、コストカットや環境負荷軽減にもつながります。
主要成分の1-ブロモプロパンには、人間や動物の生殖機能に悪影響を及ぼす性質(生殖毒性)があるため、作業者の健康管理や適切な保護具の着用が必須になります。
空気中の許容濃度がより厳しく設定されることで、リスクアセスメントや作業環境の管理コストが増加する可能性も否定できません。
素材を溶解・劣化させる可能性があるため、樹脂・プラスチックの洗浄には適していません。特に、ポリスチレンやポリカーボネートなどの感受性の高い材料では、物性低下や外観不良を引き起こすリスクがあります。
自動車や航空機のエンジン部品、ギア、ベアリングなどの金属製精密部品は、製造過程やメンテナンス時に加工油や潤滑油が付着します。油脂やグリースを効果的に溶解する特性を持つ臭素系洗浄剤は、これらの油汚れを除去するのに効果的です。
高い洗浄力により、複雑な形状や微細な隙間に入り込んだ油分もスムーズに除去できます。
プリント基板(PCB)やコネクタなどの電子部品は、製造工程でフラックスや微細な塵埃が付着しやすく、静電気が発生しやすい傾向があります。
不燃性の臭素系洗浄剤を使用することで、引火の危険性を抑えながら、電子部品の汚れを効果的に除去することが可能です。
臭素系洗浄剤の導入を検討する際は、作業者に対する安全教育や保護具の整備などの初期コストだけでなく、法規制が強化される中での将来的な維持費やリスクアセスメント体制の整備など、トータルの費用対効果に目を向ける必要があります。
また、既存の設備でどの程度対応できるのかを検証し、新たな換気装置や密閉装置の導入が必要か検討することも大切です。
精密部品洗浄機の中には洗浄剤・洗浄液を使うことなく、水だけで高い洗浄力を発揮する機種があります。
使用するのは水なので、臭素系洗浄剤のように法規制が厳しくなることはありません。洗浄剤・洗浄液にかかるコストを抑えられ、環境負荷も少ない点が嬉しいポイントです。次のページでは水だけで脱脂洗浄できる洗浄機を紹介しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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自動車部品の洗浄なら
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半導体部品の洗浄なら
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医療機器部品の洗浄なら
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使用する洗浄剤 |
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